NICU退院を控えたころ、主治医からRSウイルス対策として「シナジス」と「ベイフォータス」の説明を受けました。
Aoは在胎26週・432gで生まれ、約7か月NICUに入院。退院時も在宅酸素が必要だったため、感染症対策は大きな心配事の一つでした。
夫婦で相談した結果、わが家が選んだのはベイフォータスです。
この記事では、ベイフォータスとシナジスの違いや費用、ダウン症児の2シーズン目の投与について最新情報をもとに整理しながら、実際にNICU退院後のAoへベイフォータスを投与した経験を紹介します。
「どちらを選べばいいんだろう?」と迷っている方の参考になれば幸いです。
※ベイフォータスとシナジスはワクチンではなく抗体製剤です。投与対象や時期などはお子さんによって異なるため、実際の判断は主治医にご相談ください。
ベイフォータスとシナジスの違いは?どちらもRSウイルスの抗体製剤
RSウイルスの重症化予防について調べていると、「シナジス」と「ベイフォータス」という名前を目にすることがあります。
どちらもRSウイルスに対する抗体製剤ですが、対象となる子どもや投与方法、効果が持続する期間などに違いがあります。
大きな違いの一つが、効果の持続期間と投与回数です。
まず違いを簡単に整理します。
| ベイフォータス | シナジス | |
|---|---|---|
| 一般名 | ニルセビマブ | パリビズマブ |
| 種類 | モノクローナル抗体製剤 | モノクローナル抗体製剤 |
| 主な目的 | RSウイルスによる下気道疾患の予防 | RSウイルス感染による重篤な下気道疾患の発症抑制 |
| 投与方法 | 筋肉注射 | 筋肉注射 |
| 投与回数 | 通常1回 | 流行期に原則月1回 |
| 効果の持続 | 少なくとも約5か月 | 約1か月 |
※実際の投与対象・回数などは年齢や基礎疾患、RSウイルス流行状況などによって異なります。投与対象や投与方法については、日本小児科学会「日本におけるニルセビマブの使用に関するコンセンサスガイドライン」も参考にしています。
ベイフォータスはワクチンではなく抗体製剤
私もアメブロの記事では「RSウイルスワクチン」と書いていましたが、正確にはベイフォータスもシナジスもワクチンではありません。
ワクチンは接種した人自身の免疫反応によって抗体を作る仕組みですが、ベイフォータスやシナジスは、RSウイルスに作用する抗体そのものを体に投与する「受動免疫」です。
そのためこの記事でも、以降は「接種」ではなく基本的に「投与」と表現します。
シナジスは流行期に原則月1回、ベイフォータスは原則1回
両者の違いとして、わが家にとって特に大きかったのが投与回数でした。
シナジスは効果を維持するため、RSウイルス流行期には原則として月1回の投与が必要です。
一方、ベイフォータスは効果が長く続くように設計されており、通常は1回の投与で済みます。
早産児や基礎疾患のある子どもの家庭では、ただでさえ通院する機会が多くなりがちです。
そのため「何回病院へ行く必要があるのか」は、薬の違い以上に、実際の生活に関わってくるポイントだと思います。
ベイフォータスは1回で少なくとも約5か月の効果が期待される
ベイフォータスは1回の投与で、少なくとも約5か月にわたってRSウイルスによる下気道疾患を予防する効果が期待されています。
シナジスより長期間作用するため、1回の投与でRSウイルス流行期をカバーしやすいのが特徴です。
ただし、「1回打てばRSウイルスに絶対感染しない」という薬ではありません。
あくまでRSウイルスによる下気道疾患の予防を目的とするもので、投与後も手洗いなど基本的な感染対策は必要です。
わが家もNICU退院を前に主治医からシナジスとベイフォータスについて説明を受け、どちらにするか夫婦で考えました。
そして最終的に選んだのが、1回の投与で長期間の効果が期待できるベイフォータスでした。
我が家がシナジスではなくベイフォータスを選んだ理由
AoがNICUを退院する前、主治医からRSウイルス対策としてシナジスとベイフォータスについて説明を受けました。
そして夫婦で相談して選んだのが、ベイフォータスでした。
決め手になったのは、私たちにとってかなり現実的な問題でした。
432gで生まれ、約7か月NICUに入院したAo
Aoは在胎26週、出生体重432gで生まれました。
ダウン症があり、超低出生体重児として長期間NICUで過ごしました。
退院できたのは、生まれてから約7か月後です。
ようやく家に帰れる。
もちろん、それは本当にうれしいことでした。
ただ、退院したらすべての医療から解放されるわけではありません。
Aoは在宅酸素を使った状態での退院でした。
酸素をはじめ必要なものを準備してAoを連れて外出するのは、健康な子どもを連れて出かけるのとは少し勝手が違います。
しかも、退院後も定期的な外来があります。
そんな状況で主治医から2つの選択肢を聞いたとき、私たちが気になったのが通院回数でした。
在宅酸素を持って毎月通院する負担を考えた
シナジスを選べば、RSウイルスの流行期間中は定期的に病院へ行って投与を受ける必要があります。
一方、ベイフォータスなら投与回数を減らせる。
わが家にとって、この違いはかなり大きく感じました。
ただでさえAoには、退院後もいくつもの通院があります。
そこへRSウイルス対策のための通院が毎月加わる。
しかも当時は在宅酸素が必要な状態です。
「病院へ行く回数を一つでも減らせるなら、その方がありがたい」
これが夫婦共通の考えでした。
薬そのものの違いだけではなく、Aoを連れて実際に生活することまで考えると、私たちにとってはベイフォータスの方が合っていると感じたのです。
夫婦で話し合ってベイフォータスを選択
もちろん、これは「ベイフォータスの方がシナジスより優れている」という意味ではありません。
日本新生児成育医学会も、ベイフォータスとシナジスでは適応疾患や投与方法が異なるとしており、どちらを使用できるかは子どもの状態や地域、流行状況などによって変わります。
Aoの場合は、主治医から選択肢について説明を受けたうえで、
「毎月の通院負担を減らしたい」
という家庭側の事情も含めてベイフォータスを選びました。
そして退院後、実際に投与を受けることになります。
ところがAoが入院していた病院では、ベイフォータスを投与するのは退院後の初回外来でした。
退院から初回外来までは約1週間。
RSウイルスへの対策を考えた私たちは、その1週間をかなり慎重に過ごすことにしました。
NICU退院からベイフォータス投与まで「おこもり生活」をした
約7か月のNICU生活を終えて、ようやく自宅に帰ってきたAo。
本来なら家族みんなで「退院した!」と喜びたいところですが、私たちには一つ気がかりがありました。
Aoが入院していた病院では、ベイフォータスを投与するのは退院後の初回外来。
その初回外来までは、約1週間ありました。
Aoの病院では退院後の初回外来で投与する方針だった
長期間NICUで過ごし、在宅酸素を使いながら退院したばかりのAo。
ベイフォータスを投与するまでの間に、できるだけRSウイルスなどの感染症にはかからせたくありません。
そこで私たち夫婦が選んだのが、
「初回外来まで、家族みんなでおこもりしよう」
という作戦でした。
せっかく退院したのに、いきなり外へ遊びに行くわけでもない。
誰かを家に招いて退院祝いをするわけでもない。
Aoにとって久しぶりの自宅生活は、かなり静かなスタートになりました。
Ao兄も保育園を休み、祖父母を含め来客も断った
感染症を家に持ち込む可能性をできるだけ減らそうと考え、Ao兄も保育園を休ませました。
祖父母を含め、来客も一旦お断り。
私自身も仕事を休み、勝手に「セルフ育休」と呼んで家にこもっていました。
今振り返れば、かなり慎重だったと思います。
もちろん、すべての家庭がここまでする必要があるという話ではありません。
これは、432gで生まれて長期間NICUに入院し、在宅酸素をつけて退院してきたAoを前にした当時の私たち夫婦の判断です。
ただ、7か月も待ち続けた家族4人での生活。
外には出られなくても、
「やっとみんなで同じ家にいる」
というだけで、私にとっては十分特別な1週間でした。
ベイフォータスはNICU退院前に投与できる場合もある
ここは、私たちの経験と現在の一般的な情報を分けておきます。
ベイフォータスは「退院後でなければ投与できない薬」ではありません。(日本小児科学会|RSウイルス感染症に関するガイドラインや考え方)
現在はNICUやGCUを退院する前に投与することも可能で、日本新生児成育医学会も、NICU退院時や退院後初回外来時に投与する通年性の運用を取り入れる地域が増えているとしています。
そのため、これからNICU・GCUを退院するお子さんでベイフォータスの投与を予定している場合は、
「いつ投与する予定なのか」
を退院前に主治医へ確認しておくと安心だと思います。
わが家の場合は約1週間のおこもり生活を経て、いよいよ初回外来の日を迎えました。
そしてAoは、そこで初めてベイフォータスの投与を受けることになります。
実際にベイフォータスを投与|初外来でのAoの様子
退院から約1週間。
おこもり生活を終えて迎えた初回外来で、Aoはベイフォータスの投与を受けました。
ベイフォータスは筋肉注射で、通常は太ももの外側に投与します。
Aoも太ももに注射してもらいました。
太ももへの注射、一瞬だけ泣いたAo
いよいよ注射。
「大丈夫かな」と見守っていましたが、Aoは針が刺さった瞬間に少し泣いただけ。
終わると、すぐにケロッとしていました。
「この子、強いな……」
そう思ったのですが、同時に少し胸が痛くなりました。
NICUで何度も注射や採血を経験してきた息子を見て思ったこと
Aoは432gで生まれ、約7か月をNICUで過ごしました。
その間、採血や点滴、注射など、数え切れないほど針を刺されてきました。
小さな体で何度もそうした処置を受けてきたAo。
だから注射に慣れているのかな。
そんなことを考えると、
「強くなったね」だけでは片付けられない気持ちになりました。
もちろん、本当にNICUでの経験によって注射に慣れていたのかは分かりません。
ただ、目の前で一瞬泣いただけのAoを見て、私はNICUで過ごしていた頃のことを思い出していました。
ベイフォータスの投与そのものは、わが家の場合はあっという間に終了。
長いおこもり生活をしていたわけではありませんが、この注射が終わったことで、
「退院後の最初のミッションが一つ終わった」
そんな感覚がありました。
ベイフォータスの費用は?薬価と我が家の自己負担
ベイフォータスについて主治医から説明を受けたとき、驚いたことの一つが薬の値段でした。
「そんなに高い薬なの?」
と思ったのを覚えています。
ベイフォータスは高額な薬
2026年9月時点の薬価は、次のようになっています。
- ベイフォータス筋注50mgシリンジ:459,147円
- ベイフォータス筋注100mgシリンジ:906,302円
100mgでは、薬価だけを見ると約90万円です。
ただし、この金額は薬そのものの公定価格(薬価)であり、そのまま患者が窓口で支払う金額ではありません。
保険適用の有無や医療費助成などによって、実際の自己負担額は変わります。
Aoの場合は医療費助成があり自己負担はなかった
Aoの場合、ベイフォータスの投与は保険適用の対象となり、さらに医療費助成も利用していたため、私たちがこの薬代をそのまま負担することはありませんでした。
主治医から薬価について聞いたときには、
「そんなに高額な薬を打つのか……」
と驚いたものの、実際の家計への負担はありませんでした。
ここは、薬価だけを見て投与をためらう前に、実際に自分の子どもではどの制度が使えるのか確認してほしいところです。
保険適用や助成の対象は子どもの条件によって異なる
ベイフォータスは承認上、初めてRSウイルス流行期を迎えるすべての新生児・乳児が投与対象に含まれています。
ただし、投与できることと健康保険が適用されることは別です。(日本小児科学会|ニルセビマブ使用ガイドライン)
現在、健康保険の対象となるのは、早産児や一定の慢性肺疾患・先天性心疾患・免疫不全・ダウン症候群など、重篤なRSウイルス感染症のリスクが高いとされる子どもです。
それ以外の子どもへの予防目的の投与は、承認された使用範囲であっても健康保険の適用外となります。
さらに、保険適用後の自己負担についても、乳幼児医療費助成など利用できる制度によって家庭ごとに異なります。
そのため費用が気になる場合は、
「うちの子は保険適用になるのか」「実際の自己負担はいくらになるのか」
を、投与前に医療機関で確認するのが確実です。
わが家の場合、Aoにはダウン症があります。
そして、このダウン症はベイフォータスの保険適用だけでなく、翌シーズンの投与を考えるうえでも重要な条件の一つでした。
ダウン症児はベイフォータスを2シーズン目も投与できる?
Aoがベイフォータスの投与を受けたあと、主治医からもう一つ説明されたことがありました。
それが、
「Aoの場合は、次のRSウイルス流行期もベイフォータスの投与対象になる」
ということです。
ダウン症では24か月齢以下なら2回目の流行期も対象になる
ベイフォータスは、初めてRSウイルス流行期を迎える赤ちゃんだけに使われる薬ではありません。
重症化リスクが高い子どもについては、2回目に迎えるRSウイルス流行期も投与対象となります。
その対象の一つがダウン症候群です。
現在の添付文書では、2回目の流行期について、
- 過去6か月以内に慢性肺疾患の治療を受けた24か月齢以下の子ども
- 血行動態に異常のある先天性心疾患がある24か月齢以下の子ども
- 免疫不全を伴う24か月齢以下の子ども
- ダウン症候群の24か月齢以下の子ども
※投与対象・用法用量の詳細は最新の添付文書をご確認ください。
などが対象として示されています。
そのため、ダウン症の子どもは24か月齢以下などの条件を満たせば、2回目のRSウイルス流行期にもベイフォータスの投与対象になります。
Aoも主治医から次シーズンの投与について説明を受けた
Aoにはダウン症があり、慢性肺疾患もあります。
そのため主治医から、
「来シーズンも対象になると思います」
という説明を受けました。
初回の投与を終えたばかりだったので、そのときは「来年も打つんだ」くらいに思っていました。
ただ、NICUを退院して終わりではなく、その後もAoの基礎疾患や年齢に応じて感染症への備えが続いていく。
これも、実際に退院後の生活が始まってから知ったことの一つでした。
2シーズン目に投与する場合は主治医に確認を
2回目のRSウイルス流行期にベイフォータスを投与する場合は、初回と投与量も異なります。
初回流行期は体重に応じて50mgまたは100mgですが、2回目の流行期では200mgを1回投与します。
ただし、投与する時期はRSウイルスの流行状況などによっても変わります。
「去年ベイフォータスを打ったから、今年はどうなるんだろう?」
と気になっている場合は、次の流行期を迎える前に主治医へ確認しておくと安心です。
わが家もAoの状態を診てもらいながら、次のシーズンについて主治医と相談していく予定です。
ベイフォータスを実際に選んで感じたメリット
シナジスとベイフォータスの説明を受け、夫婦で相談してベイフォータスを選んだわが家。
実際に投与を終えて感じた一番のメリットは、やはり通院の負担を減らせたことでした。
一番大きかったのは毎月通院しなくていいこと
AoはNICUを退院したあとも、定期的な通院が必要でした。
在宅酸素を使っていた当時は、外出するだけでも準備するものが多く、気軽に「ちょっと病院へ」というわけにはいきません。
そんな生活のなかで、RSウイルス対策のために毎月通院する必要がないことは、私たちにとって想像していた以上に大きなメリットでした。
ベイフォータスは長期間作用する抗体製剤で、初回の流行期では体重に応じた量を1回投与します。
ただ、わが家にとって重要だったのは薬の仕組み以上に、「病院へ行く予定が一つ減る」ことだったと思います。
医療的ケア児家庭にとって「通院が1回減る」は想像以上に大きい
医療的ケアが必要な子どもとの外出は、家を出るまでにも準備があります。
さらに病院へ行けば、移動や待ち時間、診察などで一日がかりになることもあります。
これはベイフォータスを選んで初めて分かったことではなく、Aoとの生活を続けるなかで何度も感じてきたことです。
だからこそ、投与回数の違いは単なる、
「注射が少なくて済む」
という話ではありませんでした。
子ども本人だけでなく、家族全体の負担を一つ減らせる。
Ao家にとっては、そこがベイフォータスを選んでよかったと感じる一番のポイントです。
シナジスとベイフォータスで迷っている保護者へ
ここまでわが家の経験を書いてきましたが、すべての子どもにベイフォータスをおすすめしたいわけではありません。
子どもの年齢や基礎疾患などによって投与対象は異なりますし、家庭によって通院環境や重視するポイントも違います。
わが家の場合は、
432gで生まれ、約7か月NICUに入院し、在宅酸素を使いながら退院したAoとの生活を考えた結果、ベイフォータスを選びました。
もし主治医からシナジスとベイフォータスについて説明を受けて迷っているなら、薬の違いだけでなく、
「何回通院することになるのか」
「わが家の生活ではどちらが負担が少ないのか」
という視点でも相談してみていいと思います。
私たちにとってベイフォータスは、AoをRSウイルスから守るための選択肢であると同時に、NICU退院後の家族4人での生活を少しだけ始めやすくしてくれた選択肢でもありました。
まとめ|わが家がベイフォータスを選んで感じたこと
シナジスとベイフォータスは、どちらもRSウイルス感染症の重症化リスクが高い子どもなどに使われる抗体製剤です。
わが家は主治医から両方について説明を受け、投与回数を減らせることを大きな理由としてベイフォータスを選びました。
432gで生まれ、約7か月のNICU生活を経て在宅酸素とともに退院したAo。
退院後も通院が続く生活のなかでは、「病院へ行く回数が一つ減る」ということが、想像以上に大きな意味を持っていました。
また、ダウン症のAoは条件を満たせば2回目のRSウイルス流行期もベイフォータスの投与対象になります。実際に主治医からも、次のシーズンについて説明を受けています。
どちらの薬が適しているかは、子どもの年齢や基礎疾患などによって異なります。日本小児科学会も、両方が保険適用となるケースではどちらも使用可能としています。
この記事で紹介したのは、あくまでAoとわが家がベイフォータスを選んだ一つの経験です。
同じようにNICU退院を控えていたり、シナジスとベイフォータスの選択で迷っていたりするご家族にとって、少しでも参考になる部分があればうれしいです。

コメント