「この目の特徴、ダウン症なのかな……」
Aoが生まれた直後、私はスマートフォンで「ダウン症 赤ちゃん 特徴」と何度も検索していました。
妻はAoの顔を見て、早い段階から「ダウン症かもしれない」と感じていました。
でも私は、それを認めたくなかった。
当てはまらない特徴を見つけては安心し、当てはまる特徴があれば「これは普通の赤ちゃんにもある」と書かれた情報を探す。
そんなとき、NICUの主治医から初めて聞いたのが、「内眼角贅皮(ないがんかくぜいひ)」という言葉でした。
ダウン症に見られる身体的特徴の一つだと説明され、家に帰って必死に調べました。
ところが――。
「あれ?これ、5歳のお兄ちゃんにもあるけど?」
そうなんです。
内眼角贅皮、いわゆる「蒙古ひだ」は、ダウン症だけに見られる特徴ではありません。
だから、赤ちゃんに内眼角贅皮があるだけでダウン症と判断することはできません。
一方で、「普通の子にもあるから大丈夫」と、それだけでダウン症を否定することもできません。
Aoも最終的には、顔つきではなく染色体検査によって21トリソミー(ダウン症)と確定診断されました。
この記事では、内眼角贅皮とは何なのか、赤ちゃんやダウン症との関係、治療は必要なのかを、Aoが生まれたNICUで私たち夫婦が実際に経験したこととともにお伝えします。
もし今、赤ちゃんの顔と検索結果を何度も見比べているなら。
あの頃まったく同じことをしていた父親の体験として、少しだけ続きを読んでみてください。
内眼角贅皮とは?赤ちゃんにも見られる「蒙古ひだ」
内眼角贅皮(ないがんかくぜいひ)とは、目頭の部分を覆うように伸びている皮膚のひだのことです。
日本小児遺伝学会では、「上まぶたの内側から始まり、内眼角(目頭)を上から下へ覆う皮膚のひだ」と定義されています。
一般には「蒙古ひだ(もうこひだ)」と呼ばれることもあります。
ちなみに、私が最初にこの言葉を聞いたときは「内角眼贅皮」だと思っていました。
漢字ばかりで、初めて聞いたら何が何だか分からないですよね。
正しくは、
「内眼角」+「贅皮」=内眼角贅皮
です。
そして、この内眼角贅皮という言葉を私たち夫婦が知ったきっかけは、Aoが生まれたNICUで、医師からダウン症に見られる身体的特徴の一つとして説明されたことでした。
だから当時の私にとって、「内眼角贅皮」という言葉は単なる目の特徴ではありませんでした。
「やっぱりAoはダウン症なのかもしれない」
そう思わせる、とても重たい言葉だったんです。
内眼角贅皮は目頭を覆っている皮膚のひだ
文章だけでは少し分かりにくいので、自分の目を鏡で見てみてください。
目頭のところに、上まぶたから鼻側へ向かって皮膚が覆いかぶさっている部分があると思います。
それが内眼角贅皮です。
日本形成外科学会のガイドラインでも、内眼角贅皮は「蒙古ひだ」とも呼ばれ、日本人に多く見られる形態であることが示されています。
つまり、ここがこの記事でまず伝えておきたい大切なポイントです。
内眼角贅皮があること自体は、ダウン症だけに見られる特徴ではありません。
赤ちゃんや子どもにも見られますし、日本人を含む東アジア系では珍しいものではありません。
私はこの事実を、Aoが生まれたあとに初めて知りました。
しかも、あとから我が家の5歳の長男の顔をよく見てみると――。
普通にあるんですよね、内眼角贅皮。
「えっ、ダウン症の特徴として説明されたけど、お兄ちゃんにもあるじゃん」
当時は少し混乱しました。
でも、今なら分かります。
「ダウン症の人に見られることがある特徴」と、「ダウン症の人にしかない特徴」はまったく別の話なんです。
この違いは、当時の私のように赤ちゃんの顔を見ながら「ダウン症かもしれない」と検索している方には、ぜひ知っておいてほしいと思います。
内眼角贅皮があると「寄り目」に見えることもある
内眼角贅皮には、もう一つ知っておきたい特徴があります。
目頭側の皮膚が白目の一部を覆うことで、実際には目の位置がずれていなくても、寄り目のように見えることがあるんです。
これを「偽内斜視」といいます。
日本弱視斜視学会でも、内眼角贅皮によって目頭側の白目が隠れると、目が内側に寄っているように見えることがあると説明されています。
国立成育医療研究センターの乳幼児健診に関する資料でも、内眼角贅皮によって内側の白目が隠れ、見かけ上の内斜視になることがあるとされています。
そのため、
「赤ちゃんの目が寄っている気がする」
という場合、実際の斜視ではなく、内眼角贅皮によってそう見えている可能性もあります。
ただし、見た目だけで本当の斜視と偽内斜視を家庭で判断するのは難しいため、目の位置が気になる場合は小児眼科などで確認してもらうのが安心です。日本弱視斜視学会も、真の斜視との区別は眼科医でも難しい場合があるとしています。
ここまで読むと、
「じゃあ、赤ちゃんにも普通にある内眼角贅皮が、なぜダウン症の特徴として説明されるの?」
という疑問が出てくると思います。
私もまさにそこが分かりませんでした。
Aoに内眼角贅皮があることは、ダウン症を意味するのか。
次は、内眼角贅皮とダウン症の関係について、私たちが実際に経験したことも交えながら書いていきます。
内眼角贅皮があるとダウン症?それだけでは判断できない
「赤ちゃんに内眼角贅皮があると、ダウン症なの?」
私たちもAoが生まれた直後、まさにこのことが気になっていました。
結論からいうと、内眼角贅皮があるというだけで、ダウン症と判断することはできません。
確かに、内眼角贅皮はダウン症に見られる身体的特徴の一つです。
小児慢性特定疾病情報センターでも、ダウン症の特徴的な顔貌として「眼瞼裂斜上」「鼻根部平坦」「内眼角贅皮」「舌の突出」などが挙げられています。
でも、ここで大切なのは、
「ダウン症に見られる特徴」と「ダウン症にしか見られない特徴」は違う
ということです。
この違いを知らなかった私は、Aoの顔を見ては一つひとつ特徴を検索して、ダウン症なのか、そうではないのか、その「答え」を探そうとしていました。
内眼角贅皮はダウン症に見られる身体的特徴の一つ
ダウン症(21トリソミー)には、いくつか特徴的な身体所見があります。
内眼角贅皮も、その一つです。
ただし、医師がダウン症を疑うときも、「内眼角贅皮があるからダウン症」と一つの特徴だけで確定しているわけではありません。
実際、ダウン症で見られることがある身体的特徴には、
- 内眼角贅皮
- 眼瞼裂斜上
- 鼻根部が平坦
- 筋緊張の低下
- 手指などの特徴
など、さまざまなものがあります。
そして、これら一つひとつは「ダウン症の人だけに存在する特徴」ではありません。
内眼角贅皮にいたっては、ダウン症以外の疾患でも見られることがあり、日本小児遺伝学会では単独の身体所見として定義されています。
だから、ネット上にある「ダウン症の赤ちゃんの特徴」を見ながら、
「3個当てはまる」
「これは当てはまらない」
と数えても、それだけでダウン症かどうかを判断することはできません。
……と、今なら冷静に書けます。
でも、Aoが生まれたばかりの私は、そんなふうには考えられませんでした。
「当てはまらない特徴」を見つけては安心していた
Aoが生まれたあと、妻はかなり早い段階から「ダウン症かもしれない」と感じていました。
一方の私は、それを否定したかった。
スマホで「ダウン症 赤ちゃん 特徴」といった言葉を検索して、Aoの顔や身体と見比べていました。
そして、
「これはAoにはない」
という特徴を見つけると、
「ほら、やっぱり違うんじゃない?」
と安心する。
逆に当てはまるものを見つけると、
「いや、でもこれは普通の赤ちゃんにもあるんじゃないか?」
と、今度はその特徴について検索する。
今振り返れば、ダウン症について調べていたというより、「Aoがダウン症ではない理由」を探していたのだと思います。
そんな私にとって、医師から「内眼角贅皮」という具体的な身体的特徴を指摘されたことは、とても大きな出来事でした。
ただ、そのあと内眼角贅皮について調べてみると、意外なことに気づきます。
「あれ?これ、Aoのお兄ちゃんにもあるぞ?」
当時5歳だった長男の目頭を見てみると、確かに同じような皮膚のひだがありました。
この経験は、「ダウン症の特徴」という言葉の受け取り方を考えるきっかけになりました。
一つの身体的特徴が当てはまったからといって、それだけで診断が決まるわけではない。
反対に、ある特徴が見られないからといって、それだけでダウン症を否定できるわけでもありません。
実際、ダウン症の確定診断は、顔つきや内眼角贅皮の有無ではなく、染色体検査によって行われます。 小児慢性特定疾病情報センターでも、第21番染色体の状態を染色体検査で確認することが確定診断として示されています。
だから、もし今、
「赤ちゃんに内眼角贅皮がある」
「顔つきがダウン症に見える気がする」
と不安になって検索を続けている方がいたら、一つの特徴だけで答えを出そうとしなくて大丈夫です。
私自身、それを何度もやりました。
でも結局、検索結果の中に「ダウン症ではない証拠」を見つけることはできませんでした。
そして私たちはその後、NICUで医師から正式にダウン症の疑いについて説明を受けることになります。
そこで初めて、「内眼角贅皮」という聞き慣れない言葉を医師の口から聞いた日のことを、今でもよく覚えています。
「長男にもあるけど?」医師から内眼角贅皮を指摘された我が家の体験
私が「内眼角贅皮」という言葉を初めて知ったのは、Aoが生まれてNICUに入院していたときでした。
それまでの人生で、一度も聞いたことのない言葉です。
「ないがんかくぜいひ」
医師から説明を受けながら、頭の中では、
「……何それ?」
という状態でした。
ただ、その聞き慣れない言葉がダウン症に見られる身体的特徴の一つだということだけは、はっきり理解できました。
医師から初めて「内眼角贅皮」という言葉を聞いた
Aoが生まれたあと、妻は早い段階から「ダウン症かもしれない」と感じていました。
一方の私は、まだどこかで否定していました。
「長男のときも、ダウン症かもしれないって心配していたじゃん」
「今回もきっと大丈夫だよ」
そんなことを妻に言っていました。
でも、今振り返ると、妻を安心させようとしていたというより、自分自身に言い聞かせていたのだと思います。
そんな中、NICUで主治医からAoに見られる身体的特徴について説明を受けました。
その一つとして出てきたのが、内眼角贅皮でした。
聞いたことのない言葉だったので、忘れないようにメモを取ります。
ただ、当時の私は正式な漢字すら分かっていません。
「内角眼贅皮……?」
そんな状態で、とにかく医師から言われた言葉を残そうとしていました。
医師にとっては、ダウン症を疑う複数の所見のうちの一つだったのだと思います。
でも親である私にとっては違いました。
「ダウン症の特徴があります」
そう言われるたびに、Aoがダウン症である可能性が一つずつ積み上がっていくような感覚がありました。
家に帰って調べると、5歳の長男にもあった
病院から帰ったあと、当然のように「内眼角贅皮」について調べました。
どんな特徴なのか。
なぜダウン症と関係があるのか。
Aoの目のどの部分を指しているのか。
検索結果とAoの顔を見比べながら確認していきます。
そこで、
「目頭を覆う皮膚のひだ」
という説明を読んで、ようやく医師が言っていたことが分かりました。
そして、ふと思ったんです。
「……あれ?これ、お兄ちゃんにもない?」
当時5歳だった長男の顔を見てみました。
ありました。
普通に。
目頭のところに、同じような皮膚のひだがあります。
「え、長男にもあるけど?」
正直、拍子抜けしました。
医師から「ダウン症に見られる特徴」と説明された直後だったので、私はもっとダウン症に特有の特徴なのだと思っていたんです。
でも、実際にはそうではありませんでした。
前の項目でも触れたように、内眼角贅皮は日本人を含む東アジア系の人にも見られる特徴です。
つまり、Aoに内眼角贅皮があることと、Aoがダウン症であることは、イコールではありません。
実際、染色体異常のない長男にもありました。
この経験から、私は後になって、
「ダウン症に見られる特徴」と「ダウン症だから現れる特徴」は同じではない
ということを理解しました。
ただ、当時の私はそこまで冷静ではありません。
むしろ、
「ほら、長男にもあるじゃん」
「じゃあ、この特徴はダウン症の証拠にはならないよね」
と、少し安心したのを覚えています。
そしてまた別の特徴を検索しては、
「これは当てはまらない」
「これは普通の赤ちゃんにもある」
と、Aoがダウン症ではない理由を探していきました。
今なら、それが医学的に意味のある確認作業ではなかったことは分かります。
でも、あのときの私には必要だったのだと思います。
まだ結果を聞く準備ができていなかった。
だから私は、Aoのことを調べているようで、本当は「ダウン症ではない証拠」を必死に探していました。
私たちは「ダウン症ではない証拠」を必死に探していた
Aoが生まれた直後から、妻は「ダウン症かもしれない」と感じていました。
母親として何かを感じ取っていたのかもしれません。
でも私は、なかなかそれを受け入れられませんでした。
「長男のときも、ダウン症なんじゃないかって心配してたじゃん」
「今回もきっと大丈夫だよ」
そんなふうに妻へ話していました。
ただ、今になって思えば、あれは妻を励ましていたというよりも、私自身が「大丈夫」と思いたかっただけなのだと思います。
妻は気づいていた。でも私は「今回も大丈夫」と思いたかった
NICUの保育器の中にいるAoを見ながら、私たちは何度も話をしました。
妻はAoの顔つきなどを見て、やはり何かを感じていたようです。
一方の私は、
「いや、違うんじゃないか」
と思いたかった。
ただでさえ、Aoは在胎26週、432gという小さな体で生まれています。
突然の出産。
NICU。
たくさんの医療機器。
これからどうなるのかも分からない。
それだけでも、頭の中はいっぱいでした。
そのうえ「ダウン症かもしれない」という現実まで、一度に受け止める余裕がなかったのだと思います。
だから私は、スマートフォンで検索しました。
「ダウン症 赤ちゃん 特徴」
そして、検索結果に書かれている特徴とAoを一つずつ見比べていきました。
特徴を一つずつ検索して安心材料を探していた
今思えば、検索の仕方が完全に「答えありき」でした。
ダウン症について正しく知ろうとしていたわけではありません。
欲しかった答えは最初から決まっています。
「Aoはダウン症ではない」
その答えにつながる情報を探していました。
例えば、ダウン症の赤ちゃんに見られることがある特徴を見つける。
Aoを見る。
「これは当てはまらない」
そうすると、少し安心する。
逆に、
「これはAoにもあるかもしれない」
と思う特徴を見つけると、今度はその特徴自体を検索します。
「これはダウン症じゃない赤ちゃんにもある」
という情報を見つけると、
「ほら、やっぱり大丈夫だ」
と安心する。
内眼角贅皮について調べたときも、まさにそうでした。
しかも、実際に長男にも同じ特徴がありました。
私にとっては、これ以上ない安心材料です。
「お兄ちゃんにもあるんだから、Aoにあってもおかしくない」
そう思いました。
もちろん、その考え自体は間違っていません。
内眼角贅皮は、ダウン症ではない子どもにも見られる特徴です。
でも、それは「だからAoはダウン症ではない」という意味にはなりません。
当時の私は、その二つを都合よく結びつけようとしていました。
検索すればするほど「答え」は分からなくなった
インターネットには、本当にたくさんの情報があります。
あるサイトには「ダウン症の特徴」と書いてある。
別のサイトには「普通の赤ちゃんにも見られる」と書いてある。
写真を検索すれば、さまざまな顔の赤ちゃんが出てきます。
そして、それらとAoの顔を見比べる。
でも、どれだけ検索しても、
「Aoはダウン症です」
とも、
「Aoは絶対にダウン症ではありません」
とも答えてくれるものはありませんでした。
当たり前なんですよね。
身体的な特徴は、あくまで医師がダウン症を疑う手がかりの一つです。
顔つきや内眼角贅皮があるかどうかだけで、家庭で確定診断できるものではありません。
でも、あの頃の私は、検索すればどこかに答えが落ちているような気がしていました。
今この記事を、
「赤ちゃんの目頭が気になる」
「内眼角贅皮がある」
「もしかしてダウン症なのでは」
と不安になりながら読んでいる方の中にも、当時の私と同じように検索を繰り返している方がいるかもしれません。
その気持ちは、よく分かります。
一つでも「違う」と思える材料が欲しいんですよね。
私もそうでした。
ただ、私たちの場合、その答えは検索結果の中ではなく、病院からやってきました。
ある日、NICUから連絡がありました。
「ご両親そろって来てください」
電話を切ったあと、私と妻は顔を見合わせました。
「……来たね」
「……うん」
それまで検索結果の中で遠ざけようとしていた現実と、いよいよ向き合うときが来ました。
「両親そろって来てください」主治医からダウン症の疑いを告げられた日
NICUからかかってきた電話。
「ご両親そろって来てください」
その言葉を聞いた時点で、私たちは何となく察していました。
Aoが生まれてから、妻は「ダウン症かもしれない」と感じていた。
私はそれを否定したくて、何度も検索していた。
でも、病院からわざわざ「両親そろって」と言われた。
電話を切ったあと、妻と顔を見合わせました。
「……来たね」
「……うん」
詳しいことはまだ何も聞いていません。
それでも、何の話をされるのかは分かっていたような気がします。
主治医から「ダウン症の疑いがあります」と告げられた
病院へ行き、主治医から説明を受けました。
そこで伝えられたのが、
「ダウン症の疑いがあります」
という話でした。
突然、まったく予想していなかった病名を告げられたわけではありません。
妻はすでに気づいていました。
私も、認めたくなかっただけで、可能性については考えていました。
それでも、医師の口から直接言われるのは違いました。
これまでスマートフォンの画面を見ながら、
「これは当てはまらない」
「この特徴は普通の赤ちゃんにもある」
と探していたものが、急に現実の話になった感覚がありました。
主治医からは、Aoに見られる身体的な特徴について説明がありました。
その中の一つが、この記事のテーマでもある内眼角贅皮です。
当時の私は名前すら正確に知らなかったので、聞いた言葉を忘れないよう必死にメモを取りました。
ただ、医師も内眼角贅皮だけを見て「ダウン症です」と言っていたわけではありません。
いくつかの身体的特徴などからダウン症の可能性を疑い、そのうえで確定するための染色体検査について説明を受けました。
染色体検査を受けるか、その場では決められなかった
ダウン症の確定診断には染色体検査が必要です。
ダウン症(21トリソミー)は、21番染色体が通常より1本多く存在することなどによって生じる染色体疾患で、身体的特徴だけで確定診断するものではありません。
小児慢性特定疾病情報センターでも、ダウン症候群は染色体検査によって確定診断するとされています。
主治医からも、Aoが本当にダウン症なのかを確認するために染色体検査を受けるという選択肢を説明されました。
でも、その場ですぐに、
「お願いします」
とは言えませんでした。
なぜ迷ったのか。
検査が怖かったからなのか。
「ダウン症です」と確定してしまうのが怖かったからなのか。
今振り返ると、たぶん両方あったのだと思います。
疑いの段階なら、まだどこかに、
「もしかしたら違うかもしれない」
という余地があります。
染色体検査を受ければ、その曖昧な状態に答えが出ます。
ずっと答えを探して検索していたはずなのに、いざ本当に答えが出るとなると怖い。
人間って不思議ですね。
結局、その日は即答せず、一度家に帰って夫婦で話し合うことにしました。
「分からないまま」にしておくことはできなかった
家に帰って、妻と話しました。
検査を受けるのか。
受けないのか。
もしダウン症だったら、これからどうなるのか。
いろいろなことを考えました。
それでも最終的には、染色体検査を受けることにしました。
Aoがダウン症なのかどうかを曖昧なままにしておくより、きちんと知ったうえで必要な医療や支援について考えていく方がいい。
そう判断したからです。
そして検査の結果、Aoは21トリソミー(ダウン症)であることが分かりました。
私があれほど検索していた、
「目はどうか」
「顔つきはどうか」
「内眼角贅皮があるか」
「この特徴は当てはまるか」
という一つひとつの答え合わせではありません。
染色体検査によって、初めて確定した診断でした。
だからこそ、今「内眼角贅皮があるからダウン症かもしれない」と不安になっている方には、一つの身体的特徴だけで答えを出そうとしないでほしいと思っています。
内眼角贅皮は、ダウン症を疑う身体的特徴の一つではあります。
でも、内眼角贅皮があることと、ダウン症であることはイコールではありません。
では、医師はどのようにダウン症を疑い、最終的にどうやって診断するのでしょうか。
次は、ダウン症の身体的特徴と確定診断の違いについて、もう少し整理しておきます。
ダウン症は顔の特徴だけでは診断できない
Aoが生まれた直後の私は、ダウン症について調べれば調べるほど、「顔を見れば分かるのではないか」と思うようになっていました。
内眼角贅皮はあるのか。
目はつり上がっているのか。
鼻はどうなのか。
耳はどうなのか。
スマートフォンに表示された「ダウン症の赤ちゃんに見られる特徴」とAoの顔を、何度も見比べました。
でも、私たちが経験したように、ダウン症は顔つきや内眼角贅皮など、一つひとつの身体的特徴だけで確定診断できるものではありません。
内眼角贅皮以外にも特徴はあるが、個人差がある
ダウン症(21トリソミー)では、内眼角贅皮以外にも、特徴的な身体所見が見られることがあります。
小児慢性特定疾病情報センターでは、特徴的な顔貌として、内眼角贅皮のほか、眼瞼裂斜上(目尻側が上がって見える特徴)や鼻根部の平坦などが挙げられています。また、筋肉の緊張が弱い「筋緊張低下」などが見られることもあります。
ただし、ここで誤解してほしくないのが、
「この特徴が○個あればダウン症」
というチェックリストではないということです。
特徴の現れ方には個人差がありますし、それぞれの特徴がダウン症の人だけに見られるわけでもありません。
まさに内眼角贅皮がそうでした。
医師からダウン症に見られる特徴として説明されたのに、家に帰って確認すると、染色体異常のない長男にも同じような蒙古ひだがありました。
逆に、ネットに書かれている特徴がAoに見当たらなかったからといって、
「じゃあダウン症ではない」
とも言えません。
当時の私は、
「これは当てはまる」
「これは当てはまらない」
と、一つずつ答え合わせをしていました。
でも、本当はその答え合わせだけで診断することはできなかったんです。
もし今、赤ちゃんの顔を見ながら同じような検索をしている方がいたら、ネット上の写真や特徴だけで結論を出そうとしなくて大丈夫です。
私も散々やりましたが、そこに確実な答えはありませんでした。
ダウン症の確定診断には染色体検査が必要
ダウン症は、21番染色体が通常2本のところ3本存在する「21トリソミー」などによって生じる染色体疾患です。
そのため、確定診断は染色体検査によって行われます。
小児慢性特定疾病情報センターでも、特徴的な身体所見などからダウン症を疑い、染色体検査によって確定診断するとされています。
Aoも同じでした。
医師はAoに見られる複数の身体的特徴などからダウン症を疑いました。
でも、その時点ではあくまで、
「ダウン症の疑いがあります」
でした。
そして私たち夫婦が話し合って染色体検査を受け、結果として21トリソミーであることが確認されました。
そこで初めて「ダウン症」と確定したんです。
今振り返ると、この違いはとても大きかったと思います。
身体的特徴は「疑うきっかけ」になることはあっても、それだけで確定するものではない。
内眼角贅皮についても同じです。
「赤ちゃんに蒙古ひだがある」
「内眼角贅皮があるように見える」
というだけで、ダウン症だと判断することはできません。
一方で、ネットの記事だけを読んで、
「普通の赤ちゃんにもあるんだから絶対に大丈夫」
と判断することもできません。
私自身が、まさにそれをやっていました。
不安がある場合は、インターネット上の「ダウン症の顔チェック」と我が子を見比べ続けるより、乳幼児健診やかかりつけの小児科などで相談する方が、確かな情報につながります。
そして、もし医師が必要だと判断すれば、専門的な評価や検査へとつながっていきます。
私たちの場合も、内眼角贅皮という一つの特徴からダウン症が決まったわけではありません。
医師が複数の所見から可能性を考え、最終的には染色体検査で診断された。
これが実際に経験した流れです。
では、内眼角贅皮そのものについてはどうなのでしょうか。
「蒙古ひだがあるなら治療した方がいい?」
「大きくなったらなくなる?」
そんな疑問もあると思います。
内眼角贅皮は治療が必要?成長で目立たなくなることも
「内眼角贅皮があるなら、何か治療をした方がいいの?」
Aoについて調べていた当時の私も、「ダウン症との関係」とあわせて気になった部分です。
結論からいうと、内眼角贅皮があるというだけで、必ず治療が必要になるわけではありません。
日本形成外科学会のガイドラインでも、内眼角贅皮そのものには明確な診断基準がなく、臨床的に問題になるのは、まつ毛が内側を向いて眼球に触れる「睫毛内反」を伴う場合などとされています。
つまり、
「蒙古ひだがある=病気=治療しなければならない」
と考える必要はありません。
子どもの内眼角贅皮は成長で目立たなくなることがある
内眼角贅皮、いわゆる蒙古ひだは、アジア系の乳幼児にも見られる形態です。
子どもの頃は鼻の付け根がまだ低いため、目頭を覆う皮膚のひだが目立ちやすくなります。
その後、顔や鼻が成長していくにつれて、蒙古ひだが以前ほど目立たなくなることもあります。
だから、赤ちゃんの目頭に内眼角贅皮があるからといって、
「ずっとこのままなのかな」
と心配しすぎる必要もありません。
ただし、すべての人で完全になくなるわけではありませんし、大人になっても蒙古ひだが残っている人はいます。
実際、Aoの内眼角贅皮について調べたとき、当時5歳だった長男にも同じようなひだがありました。
それまで私は、自分の子どもの目頭に蒙古ひだがあるかどうかなんて、気にしたこともありませんでした。
Aoにダウン症の疑いが出たことで初めて、
「こんなところまで身体的特徴として見るんだ」
と知ったんです。
一度「ダウン症の特徴」として意識してしまうと、ものすごく特別なものに見えてしまいます。
でも周りを見てみると、必ずしもそうではありませんでした。
逆さまつげなどを伴う場合は治療が検討されることも
一方で、内眼角贅皮に関連して治療が必要になるケースもあります。
例えば、内眼角贅皮に睫毛内反(まつ毛が内側を向いて眼球に触れてしまう状態)が伴っている場合です。
日本形成外科学会のガイドラインでも、睫毛内反を併発する場合には内眼角贅皮が臨床的な問題になるとされ、状態によって内眼角形成術などが検討されます。
また、前述したように、蒙古ひだによって目頭側の白目が隠れ、寄り目のように見える「偽内斜視」のこともあります。
見た目だけでは本当の斜視との区別が難しいこともあるため、
「ずっと寄り目に見える」
「まつ毛が目に当たっている」
「目を痛そうにしている」
など、気になる様子があれば眼科で相談するのが安心です。
大切なのは、内眼角贅皮という言葉だけを見て、必要以上に病気と結びつけないことだと思います。
私自身、「ダウン症の特徴」と聞いたことで、この言葉を必要以上に重く受け止めていました。
でも、内眼角贅皮そのものはダウン症だけに見られるものではありません。
治療についても、「あるか、ないか」だけではなく、目の機能に問題があるのか、ほかの症状を伴っているのかによって判断されます。
そしてこれは、この記事を書いている今だから冷静に言えることでもあります。
Aoが生まれたばかりの頃の私は、そんな医学的な整理をしたかったわけではありませんでした。
知りたかったのは、たった一つです。
「Aoはダウン症なのか、違うのか」
内眼角贅皮を検索したのも、その答えを見つけたかったからでした。
あの頃「内眼角贅皮」を検索していた自分に伝えたいこと
Aoが生まれたばかりの頃、私は何度もスマートフォンで検索していました。
「ダウン症 赤ちゃん 特徴」
「内眼角贅皮 ダウン症」
「ダウン症 顔」
検索してはAoの顔を見る。
また検索する。
今思えば、知識を得るためというより、自分が欲しい答えを見つけるための検索だったと思います。
欲しかった答えは一つ。
「Aoはダウン症ではない」
それだけでした。
一つの特徴だけで答えを出すことはできなかった
内眼角贅皮について調べたとき、私は少し安心しました。
ダウン症に見られる身体的特徴ではあるけれど、ダウン症ではない子どもにもある。
しかも、実際に5歳の長男の目にもありました。
「ほら。お兄ちゃんにもあるじゃん」
その瞬間は、少しだけ「大丈夫かもしれない」と思えました。
でも、内眼角贅皮が長男にもあることは、
Aoがダウン症ではないことの証明にはなりませんでした。
反対に、Aoに内眼角贅皮があることも、
Aoがダウン症であることの証明にはなりませんでした。
一つの特徴だけを切り取って、「ある」「ない」と答え合わせをしても、そこから確定診断はできなかったんです。
今なら当たり前のように分かります。
でも、あの頃は分かりませんでした。
いや、本当は分かっていたのかもしれません。
それでも検索せずにはいられなかった。
不安なときって、そういうものなんだと思います。
検索ではなく、染色体検査で初めて答えが出た
結局、Aoがダウン症であることが分かったのは、顔つきでも内眼角贅皮でもありません。
染色体検査でした。
主治医から「ダウン症の疑いがあります」と説明を受け、夫婦で話し合って検査を受けました。
そして、21トリソミーであることが分かりました。
結果を聞いた瞬間から、
「よし、前を向こう」
なんて思えたわけではありません。
そんな簡単な話ではありませんでした。
ただ、それまで続いていた、
「ダウン症かもしれない。でも違うかもしれない」
という、答えのない時間には終わりが来ました。
そこから少しずつ、
「ダウン症なのかどうか」
ではなく、
「Aoに何が必要なんだろう」
と考える時間に変わっていきました。
ダウン症について調べる目的も変わりました。
「ダウン症ではない証拠」を探すためではなく、Aoに起こる可能性のある合併症や、これから受けられる支援について知るために検索するようになりました。
同じ「ダウン症」と検索しているのに、検索する意味がまったく変わったんですよね。
今、不安になって検索している親御さんへ
もしこの記事にたどり着いた理由が、
「赤ちゃんに内眼角贅皮がある」
「ダウン症の顔つきに見える気がする」
「もしかして、うちの子も……」
という不安だったなら。
きっと、当時の私と同じように、いろいろなページを行ったり来たりしているのではないでしょうか。
「この特徴は当てはまらない」
と安心した直後に、
「でも、こっちは当てはまる」
とまた不安になる。
私も何度も繰り返しました。
だからこそ、この体験談で一番伝えたいのは、
内眼角贅皮があるだけで、ダウン症と決まるわけではない
ということです。
そして同時に、
ネット上の特徴と我が子を見比べるだけで、「ダウン症ではない」と判断することもできません。
不安があるのであれば、乳幼児健診やかかりつけの小児科などで相談してください。
必要があれば、そこから専門的な診察や検査につながります。
あの頃の私に今、何か一つだけ伝えられるとしたら、
「その特徴一つに、答えのすべてを求めなくていいよ」
と言うと思います。
Aoの内眼角贅皮について必死に検索していたあの日から、私たち家族の生活は大きく変わりました。
もちろん、思い描いていた子育てとは違います。
不安になることも、現実を突きつけられることもあります。
それでもAoは、「ダウン症の特徴を持った赤ちゃん」というだけの存在ではありません。
笑ったり、泣いたり、少しずつできることが増えたり。
私たちにとっては、ただのAoです。
この記事が、あの頃の私と同じように検索を続けている誰かにとって、一つの特徴だけで答えを出さなくてもいいと知るきっかけになれば嬉しいです。
まとめ|内眼角贅皮だけでダウン症かどうかは判断できない
今回は、内眼角贅皮とは何か、赤ちゃんやダウン症との関係について、Aoが生まれたときの私たち家族の体験とともに書きました。
内眼角贅皮は、目頭を覆うように伸びている皮膚のひだで、一般に「蒙古ひだ」と呼ばれるものです。
ダウン症に見られる身体的特徴の一つではあります。
でも、この記事で一番伝えたかったのは、
「内眼角贅皮がある=ダウン症」ではない
ということです。
実際、Aoが生まれたときに医師から内眼角贅皮を指摘され、家に帰って調べてみると、当時5歳だった長男にも同じような蒙古ひだがありました。
あのときの私は、
「ほら、お兄ちゃんにもある。じゃあAoも大丈夫かもしれない」
と思いました。
でも、それもまた答えではありませんでした。
内眼角贅皮があるだけでダウン症とは判断できない。
同時に、ダウン症ではない子にも見られる特徴だからといって、ダウン症を否定できるわけでもない。
身体的な特徴は診断の手がかりにはなっても、それだけで答えを出すことはできません。
Aoの場合も、主治医が複数の所見からダウン症を疑い、最終的には染色体検査によって21トリソミーと確定しました。
あの頃の私は「ダウン症ではない理由」を探していた
この記事を書きながら改めて思ったのは、Aoが生まれた直後の私は、ダウン症について知りたかったわけではなかったということです。
検索していたのは、
「ダウン症 赤ちゃん 特徴」
「内眼角贅皮 ダウン症」
といった言葉。
でも、本当に探していたのは、
「Aoはダウン症ではない」
と思える情報でした。
当てはまらない特徴を見つけて安心する。
当てはまる特徴があれば、「普通の赤ちゃんにもある」と書いてあるページを探す。
何度検索しても不安が消えないのに、それでもスマートフォンを置けませんでした。
もし今、この記事を読んでいる方が同じような状態なら、その気持ちはよく分かります。
ただ、顔つきや一つの身体的特徴をネット上の情報と見比べ続けても、確定診断はできません。
気になることがあるなら、乳幼児健診やかかりつけの小児科などで相談してみてください。
診断がついてから、検索する目的が変わった
Aoが21トリソミーだと分かったからといって、すぐに気持ちを切り替えられたわけではありません。
それでも、少しずつ検索する内容は変わっていきました。
「ダウン症ではない証拠」を探すことから、
「Aoに必要なものは何だろう」
を探すことへ。
ダウン症にはどんな合併症があるのか。
どんな療育があるのか。
どんな福祉制度や支援を利用できるのか。
そして、Aoはこれからどんなふうに成長していくのか。
今でも分からないことだらけです。
だから、このブログには私たちが実際に経験したことを残していこうと思っています。
NICUでのこと。
ダウン症の告知。
432gからの成長。
療育手帳や身体障害者手帳。
医療や福祉制度を利用して初めて分かったこと。
専門的な情報だけなら、もっと詳しいサイトがあります。
でも、「実際にその立場になった親はどうだったの?」という部分は、当事者だからこそ残せるものがあると思っています。
内眼角贅皮という一つの言葉からこの記事にたどり着いた方にも、必要なときにはぜひ他のAoの記録を読んでもらえたら嬉しいです。
私たちもまだ、Aoとの子育ての途中です。

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